事故

気が付くと集中治療室でちんちんやら鼻やら体中いろんなとこをチューブで機械につながれて寝てた。ドラマみたいよね。例えて言うなら、蜘蛛の巣にかかった蝶。はかねえ。
頭打ってただで、事故当時の記憶はスッポリ無い。警察の現場検証によると、真相はこうだ。

一人、山の中の道を原付にまたがって颯爽と走る俺。と、何かを避けて道の右にあった大きな溝に落ちる俺。垂直に２〜３メートル落下する哀れな俺。運悪く半ヘルかぶってたせいで、落ちた時の衝撃でスピードメーターにしたたかに顔を打ちつけるドラマティックな俺。その時の反動でブリンと飛び出す右目。プランプランになる右目。頬にピタピタと当たる右目。原付を降りると、そのまま溝の中に横たわる俺。しばらくして道路に這い登る俺。夜中の山道を右目プラプラさせて、血だらけ泥だらけで歩く俺。たまたま車で通りかかり俺を目撃して、悲鳴をあげながら逃げる地元カップル。１キロ先の民家に助けを求め、その家の車で病院に連れて行かれる俺。あの時は大変お世話になりました。

結局、右目は失明しました。

なぜ、突然思い出したかのようにこんな過去を語るかというと、まあ実際突然思い出したからってのもある。
今日、カメラのファインダーを右目で覗いて、左目を閉じたら真っ暗闇でやんの。あ、右目見えないんだって思い出した。
でも、それ以上に言いたいこともあるんだぜ、一応。言わせて。

「俺は仮にも障害があるんだからチヤホヤしろや！脳性マヒみたいにわかりやすい障害持った奴ばっか優しくしないでさ！松葉杖持った奴は極道も避けてくれんのに、俺にはなんのケアもなしかよ！松葉杖ってな、魔法の杖かなんかか！？小児マヒ持った奴はピュアな天使で頑張って生きてるとか奇麗事言って涙流す暇があるなら、俺になんか奢れ！俺にボランティアしろ！俺をいい気分にさせろ！」

こんな俺の特技は重度障害者のモノマネです。