ある男の日記より。

いつもと同じようにゴミ溜めのような部屋で目を覚ます。
直前まで弟を撲殺する夢を見ていたせいか、気分は最悪。頭が、痛い。痛い痛い。

口の中が胃液のせいでゲロ酸っぱい。余計に気分が悪くなる。一瞬反吐を吐きそうになるがそれを我慢して、吸殻が山のようになっている灰皿に唾液を吐き出す。
そのまま台所で口をゆすぐとなんとか吐き気が収まった。頭が、ひどく痛い。

気を紛らわせるためにテレビのスイッチを入れる。朝のワイドショーがやっている時間だ。
その瞬間、ブラウン管いっぱいに下痢気味の肛門がアップ映像で映し出される。よく見ると浅香光代の顔だった。
ますます気分が悪くなる。頭が、痛い。

痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い。
頭が痛くてたまらない。
そうだ、アスピリンを飲もう。ゴキュゴキュ飲む。
しばらく壁を背に呆然と安静にしていると幾分頭がはっきりしてきた。
気分がディープなのは変わらないが。
回答が出ないのはわかっているのに、なぜだ、なぜだ、なぜだと、問題ばかりが頭に浮かぶ。
柱を思い切り叩くと手の甲を軽く出血した。柱の方はビクともしない。安アパートの柱のクセに生意気な。

よし、そろそろ出かけようか。今日も死ぬにはもってこいの日だ。

３月１０日