バナナワニ園

もう、とにかくワニ、ワニ、ワニ、たまにバナナ、バナーナ、ヴナーナ。
うんざりするほど黄色とワニ肌色の世界。

なにが大変て、ワニの餌付けだね。両手にエサの入ったバケツを下げて、ゴム長穿いて沼地へズブズブ入って行く。
ナニこれ？少林寺の修行かなにか？ってほどの重労働。しかも危険極まる。
ワニが目だけを水面から出して目の前を横切って行く恐怖。
アホか！死ね！死ね！って心の中でずーっとツッコんでたよ。

事件が起きたのは４日目だったね。
俺と仕事仲間が餌付けを終了してエントランスでくつろいでるとスタッフの一人が血相変えて飛び込んできた。

「森川さんが！森川さんが戻って来ません！」

それを聞いたサングラスに頬傷の男が吼える。

「バカヤロー！あれほどマイアミキングワニの餌付けには細心の注意を払えと言ってあるだろうが！」

この人は飼育員のチーフでジョージさんという。頬の傷は昔飼ってたワニに付けられたものだ。

「ジョージさん、すいません！すぐ探してきます！」

「ああ。もう・・・手遅れだろうがな。」

そう言うとジョージさんはこちらを向き直り、

「見ての通り、命がけさ。だがな、ワニを見て目を輝かせている子供たちを見るとな・・・やめるワケにゃあいかねえのさ。世の中には俺たちみたいな馬鹿だっているんだぜ・・・。」

と寂しげに笑った。

まあ、読めばわかると思うが、
行ってねえ。
っていうか、行ったこともねえ。
昨日見た夢だ。