発表 2004/10/22

創造主

『私はお前たちが神と呼ぶ存在だ。お前に頼みがある。』
大学から帰ってベッドに寝転んでテレビを観ていると突然、頭の中に神からのメッセージが届いた。
「・・・不思議だな。普通、こんな声が聞こえたら頭がおかしくなったんじゃないかと思うだろうに、嘘じゃないって確信してる。」
『はは。そういうふうにお前の意識を操作したからな。』
「それで頼みって?神様からお願いなんて、普段と逆だな。」
『そうだな、回りくどく言ってもしょうがなかろう。お前、神・・・いや、創造主と言ったほうが的を得ているか。その創造主になって新しい世界を創造してみるつもりはないか?』
「は?そりゃあ、小さい頃なんてそういう夢を見たこともあるけど。詳しく説明してくれよ。」
『うむ。そもそも「創造主」というのは次々と代替わりしていくものでな、私も私の世界を創造した「神」から跡を継いだのだ。そして私はお前のいる世界を創造して、今まで見守ってきた。簡単に言うと創造主の最初の仕事が新たな世界の創造で、最後の仕事が次の創造主を選ぶということだな。』

「最後・・・?」
『私の体はもう長くはもたないのだよ。やっかいな病気にかかってしまってね。この世界に来ている間は私の世界の時間は止まっているが、戻ればおそらく今日、明日の内に私は死んでしまうだろう。そのせいで今回は精神だけでこちらに来ている。』
「それならずーっとこっちの世界にいれば済む話じゃないの?」
『考えないでもなかったが、私はこの世界を自分の思う通りに創造してこれまで充分楽しませてもらった。2つの世界を行き来して他の人の何倍も生きてきた。もういいんだよ。それに元の世界でも私は幸せだった。結構大きな会社の部長にもなれたし、愛人も2人いた。』
「後半、なんか情けないなあ。」

『まあまあ。ここでは創造主だろうと私の生まれた世界ではただの人だからな。それより、どうだね?やってみないか?今、こちらで生きている人間の中では君が一番の適任者だと思うんだが。』
「俺だってただの大学生だぜ?どうしてそう思うのさ。」
『適度に意地が悪くて、ややサディスティックな部分もある。しかし動物を虐待して楽しめるほど度胸があるわけでもない。なんと言うか、私に一番似ているんだよ。』
「褒められてないな、これは。でもまあ、自分の思い通りに作っていける世界があるってのは、気分がいいな。いいよ。やってみよう。」
『ありがとう!やっと肩の荷が降りたよ。すぐ新しい世界に行ってみるかね?』
「いや、ちょっと待ってくれ。どうせなら、どういう世界にしたいかメモするから持って行っていいかい?」

『・・・ああ、もちろんだとも。フフ。すっかり忘れていたが私も初めてこの世界に来た時もメモをポケットに忍ばせて来たんだったな。』
「そんなに待たせないから。・・・・ふう。こんなもんでいいかな。」
『もういいのかい?じゃあ、新しい世界に送るよ。私は自分の世界に戻るから、これでお別れだ。』

彼が言うが早いか、目の前が暗転した。何か五感の他に3つ4つ感覚が付け足されたような万能感に満たされる。
来たのだ。俺の世界へ。俺が自由にしてもいい世界へ。
早速、創造に取り掛かろう。手にしていたメモに目を落とす。

え?何も見えない。
そうか。未創造のこの世界には何もない。そう、光さえも。
こんなに暗かったらメモを読めないじゃないか。予定外だがまずは光を創ろう。

「光、あれ。」
あ。そうか。それでまず光なんだ。

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