発表 2004/10/24

不幸の手紙

『これは不幸の手紙です。これを見た人は1週間以内に13人の人に全く同じ文面で手紙を送ってください。さもないと、考えうる最悪の不幸があなたに訪れます。このことを信じずに手紙を止めてしまった高校生は、火事になった自宅に駆けつけた消防車に轢かれて死んでしまいました。』

最悪だわ。
ひねりが無さ過ぎるし、平凡。
もし私がこんな不幸の手紙を受け取っても「いまどきこんなこと信じる人いるのね」と鼻で笑って終わりだろう。
もしかすると、友達に見せて笑い話のタネにするかもしれない。もっと、斜め読みしただけで背筋が凍りつくようなインパクトのある内容を考えないと。

私があいつに不幸の手紙を出そうと考えたのはほんの数時間前。
前から気に食わない女だった。ちょっと仕事ができるからといって、エリート面で私を馬鹿にしていたあいつ。
何か仕返ししてやりたいと常々思っていたけど、昔流行した不幸の手紙が今になって突然やってきたら不気味かしら、なんてふと思ったのだ。

しかし、いざ書き始めてみるとこれがなかなか難しい。
これを読んで気分を悪くして、仕事でミスの一つでもしでかしてくれないと意味ないじゃないのさ。
もっと、私の中のドス黒い部分を搾り出してやらねば。

決意した私はそれから毎日、我ながら呆れるほどの情熱で不幸の手紙の推敲を続けた。意外と凝るタイプね、私って。
その甲斐あって2週間もすると原稿用紙50枚からなる大長編の不幸の手紙が完成。好きなだけ嫌な気分になってちょうだいな。フフ。

しかしこれだけ魂こもってると、むしろ本当に人を不幸にさせる力があるんじゃないかしら。
いいえ、きっとそうよ。私の悪意そのもの。私の分身。書いた本人が読んでも吐きそうになるような内容だもの。
あいつに嫌な気分になってもらうのは構わないけど、もし私の手紙のせいで死んだりしたら私のほうがすごくブルーになるんじゃないかしら。
ちょっとそれは困るわよ。
それだけならまだしも、もしあいつが思ったよりへなちょこで律儀に書き写して13人に不幸の手紙を出したりしたら?
その13人がまた、たまたまへなちょこだったら?
それはかなり困るわよ。

13人が13人に送ったら169人。169人が13人に送ったら2197人。28561人、371293人・・・。
地球上全ての人に不幸の手紙が届くのも時間の問題だわ。
可能性、相当あるわよ。他人が読んだら多分胃を壊すくらい悪意に満ちた内容だもの。従わないと何があるか知れたもんじゃない。

もしかして・・・私のせいで地球って滅んでしまうんじゃないかしら。
ちょっとちょっと。まずいんじゃない?それって。
だいたい私はあいつに嫌な気持ちになってもらえればいいってだけで、人類滅亡なんて昔のアニメの悪役みたいな狙いがあるわけじゃない。
やっぱり、出すの、やめようかしら・・・。

 

私が郵便局の前でそんなふうに悩んでるとそこへ居眠り運転のトラックがつっこんできて、哀れ私ははねられてしまった。
頭からドクドク血を流しながら、私は
「もしかして今、私は世界を救ったヒロインなのかもしれないわ。」
なんてことを考えながら、割と幸せな気分で息を引き取った

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