実のところを言うと、俺はサッカーの20年に一度の天才なのだ。今まで内緒にしていてもうしわけない。
時間がある日はアパートの目の前に広がる地元大学のグラウンドに出かけて行っては、サッカー部の練習に参加して部の若造どもに稽古をつけてやったりするわけだ。
俺が遅めにグラウンドに現れ、
「おう、今日も元気にやっちょるかね?」
と気軽に声をかけてやると、サッカー小僧たちは目を爛々と輝かせつつ
「あ、サッカー仙人だ!サッカー仙人がいらしてくれた!」
と俺の周囲に群がってくる。
そして全員で肩を組んで『贈る言葉』を大絶唱。
いつしかサッカー仙人マンセー、マンセーと俺を称える声でグラウンドは満たされるのだ。
たまに余りの盛り上がりぶりに大学当局は困惑し、警察を呼ぶこともある。
ポリスメンは
「一体これは何のランチキ騒ぎなんだね。」
とやってくると俺の姿を認め
「やあ、鬼畜さん。またあんたかね。いや、鬼畜さんが来てるんじゃしょうがないな。この餓鬼どもが立派な人間としてやっていけるようにしっかり教育的指導してやってくださいよ。」と親指を立てつつニカッと笑って去ってゆくのだ。
俺もそれに「是非もなし。」と親指を立てて応じると小僧っ子たちに向き直り
「ようし!今日は祭りだ!俺祭り!」
と叫ぶ。部員たちの地響きのような歓声がそれに続き、夜は更けてゆくのだった。
とか、一人で書いてるとむなしくなってくる。