発表 2005/01/21

雪の日の出来事

ダラダラと今日起こったことでも書こうか。

 

朝、起きると雪が積もっていた。俺はいつもと同じく狼犬のタロを連れて散歩に出かけた。
近所に住む重じいは今朝も早起きで雪かきをしている。

「よお、鬼畜よ。今日も元気だっぺな。」

俺は重じいに笑顔で応える。
この近辺で俺は「腕白小僧の鬼畜」としてちょっとは知られていた。

村の中心にある広場までタロと駆けるのが俺の日課だ。
特に今日のような雪の日には村一番に広場に行って夜の内に降り積もった処女雪に思う様足跡をつけるのが楽しみなので足が軽い。

しかし、今日ばかりは違った。すでに村の人間が何人か集まって輪を作っていたのだ。
輪の中心に・・・父がいた。雪の上に倒れこんだ父の周辺の雪は、父の血で赤黒く染まっていた。
まるで南国の大輪の花が咲いたようだ。

ゆうべから山に猟に出ていた父がなぜここに?
なぜ、父の顔の半分が抉り取られている?
一度に色々なことが頭を駆け巡り、ひどく混乱した。

「おとう!おとう!一体、どうしただ!」

「おお・・・鬼畜か。」

虫の息、というのはこれか。こんな関係ないことまで考えてしまうほど混乱していた。

「わしらが駆けつけたときにはもう・・・。」 「鬼畜や、気を落とすんじゃないよ。」

村人たちが口々に言うが耳には入らなかった。

トラカブトだ・・・。トラカブトにやられた・・・。

トラカブト!この名を聞いた村人全てが凍りついた。
村の周辺に出没するという巨大な熊の名だ。
頭が虎のような縞模様に見えることからこの通り名で呼ばれる。
巨大なだけではない。この時期になると人里に降りてきては人を襲い食う、冬の魔物だ。
これまで近隣の村の猟師が幾人も挑み、同じ数だけの死体を築いてきている。

しかし。トラカブトは確か山奥にある神仙谷に落ちて死んだと聞いていたが・・・。

「間違いない・・・。あれはトラカブトだ。トラカブトなら、グリズリー心臓の下にグリズリー嚢がある・・・。そこにスペシウム光線を叩き込め。それがやつの弱点・・・。」

ようやくそれだけを言うと、父は事切れた。

死の瞬間まで父は猟師だった。それがなんとなく誇らしくもあった。

 

毎日が必要以上にドラマティック。

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