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発表 2005/11/29

10人目のプレイヤー"春日部"

うちの野球部は弱小だ。部の開設以来15年間、公式戦ではただの1勝すらあげたことがない。
この地区では一番の安全パイだということで、他の高校の野球部主将は地区予選の組み合わせ発表の際には『1回戦はうちのチームと当たれ』と祈るのだと言う、まことしやかな噂が流れるほどだ。そして多分、それはただの噂などではなく、真実なのだろう。
うちのチームが弱いというのは、もはや地区内の定説になっているのだ。

すすんで惨めな想いをしたい、というヤツなどいるはずがない。
今年、気が付いてみたらうちの野球部の部員は10人まで減っていた。うちの高校自体は生徒1000人を越すマンモス校だというのにだ。
さらに惨めなことは、俺がこの10人ほどの野球部の唯一の補欠にまわされてしまったことだ。
これは相当な屈辱ですよ。

しかし、俺はそれでもめげるようなことはしない。
なぜなら、部員10人全員でこれまで「公式戦1勝」を合言葉に必死で練習してきたからだ。
そう、俺はこのチームの10人目のプレイヤー。
応援ならまかせとけ!のどから血が出るまでみんなの応援を続けるよ!
相手チームの戦力分析だって、俺が万全に仕上げたんだ!

念願の1勝まで、あと1人。あと1人。
結果は俺の集めたデータ通りだった。敵バッターは外角に逃げて行く球につい手を出してしまい、フラフラと上がった白球はファーストの永見のミットに吸い込まれた。
俺はゲームセットのコールと同時にベンチから立ち上がり、マウンドに向かって走り出していた。頬は涙に濡れている。
他の部員たちも同じようにして走り寄ってきた。

ピッチャー滝津。泣いている。
お前、スタミナに不安があったのに、よくがんばったな。

キャッチャー大沼。やはり泣いている。
お前は右手の親指の爪が試合中に割れたんだったな。それでも諦めない根性は、みんなの心に火を着けたぜ。

センター火口。
守備範囲を一歩でも広げるために、誰よりも遅くまで走り込んでいたよな。

サード岡山。
このチームの4番バッターはお前以外に考えられないよ。7回のソロホームラン、最高のプレゼントだったぜ。

みんな、みんな、最高だ!最高のチームメイトだ!

「みんな、ありがとう。これは俺たち、全員の力でつかんだ勝利だ。俺はみんなのことを、心の底から誇りに思う。」

キャプテンでショートの大神が、嗚咽をあげながらみんなに語り始めた。

「中でも、補欠の春日部。俺は今日勝利できたのは春日部のおかげだと思う。」

驚いた。
しかし、驚きつつも納得した。
俺が休み時間や練習後の時間を使ってスパイクの手入れやユニフォームの洗濯なんかを一人でしていたのも、見てくれていたのか。
大神。やっぱりお前はキャプテンだな。どんな些細なことも見逃すこともない。キャプテン選挙の時に、お前に投票して良かったよ。

「今日の勝利は間違いなく春日部のおかげだ。3年生だからって、最後だからって、レギュラーにこだわらずに補欠でいてくれて良かったよ。
もしも今日、春日部が出ていたらと思うと

ゾッとする。

いいか、みんな。この先、誰か一人でも怪我で欠場するようなことがあれば、今度は間違いなく春日部を出さざるを得ないんだからな。 後がないと思って気合入れて行けよ!」

もちろんだよ!キャプテン!」

「ありがとうな!春日部!」

打ち上げの準備、よろしくな!」

・・・・・・・・・・・・。











夢なんか見るな!
大概、こんなもんだ。

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