発表 2006/04/13

藤子不二雄の問題作

時代の流れによって娯楽・フィクションの世界にも影響が出ることがある。

例えば、セリフ。
「差別的だ」ということで古い作品を再発売、または増刷する際にセリフが代えられる、削除されるということはかなり多い。

例えば有名どころでは、白土三平の『カムイ伝』で「相手はメクラでねえか」という農民のセリフが「相手は目が不自由でねえか」にすりかえられていた例が挙げられる。
江戸初期の農民がこんな持って回った言い方をしていたはずがないのだが、作品の質以上に表層的な言葉を気にする人間が出版社サイドにいたことはこの作品にとって大いなる不幸であった。

また、最近では手塚治虫の『ブラックジャック』の「木の芽」においても「カタワ」という言葉を「病気」に代えてしまったがために、ストーリー自体が破綻してしまったという例も耳に入る。

いや、言葉が代えられてもなお出版され続ける作品はそれでも幸せな部類なのかもしれない。
藤子不二雄の『ジャングル黒べえ』などは外見がまんま土人であったためか、現在その存在そのものがなかったかのように扱われているのだ。



さて、同じく藤子不二雄の作品で同じくその存在が抹消されている作品がある。

それが、『ジャーマン』である。

これは冴えない小学生、須羽ミツ夫が宇宙人バードマンから貰ったジャーマンセット(マスク、マント、バッジ)を装着することで、ドイツ人の力を持った正義のヒーローになるという物語である。



冴えない須羽ミツ夫
↑変身前の冴えないミツ夫



ジャーマンの勇姿
↑変身後の凛々しいミツ夫(ジャーマン1号)



ちなみに、『ジャーマン』はまだ差別に対しておおらかだった1980年代にはアニメ化もされている。


参考資料:主題歌『きてよジャーマン』

ジャーマン ジャーマン ジャーマン
遠くで呼んでる 声がする

きてよ ジャーマン ベルギー戦線へ
きてよ ジャーマン フランス戦線へ
ココロ 伝える 合言葉
『次はイタ公抜きでやろうぜ!』

行くよ 待ってて 同盟を組もう
日独 ココロとココロつないで
みんなで飛ぼうよ 真珠湾
ジャーマン ジャーマン ジャーマン
きたよ ぼく ジャーマン ジャーマン




このジャーマン1号(須羽ミツ夫)は変身後、ビールとウィンナーをむさぼるように飲食しながら、ことあるごとに

「美女にピンヒールで踏まれながら小便かけられたいなあ。」

と発言していた。
このことがあまりにドイツ人の実像に迫るものだったために、現在お目にかかる機会を奪われたのだと言われている。

時代の流れとはいえ、優れた作品が世の中から抹殺されるというのはまったくもって残念なことだ。

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